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大人は楽しい

暮れの読書感想文

 最近読んで、おもしろかった本。



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中崎タツヤ 『もたない男』

中崎タツヤのもたないエッセイ。
以前に忍者ムラサキさんも書いていましたが、とにかく物をもたない人です。
自分では「日本で五本の指に入るほど仕事場に物がない漫画家」を名乗っていますが、そんなことはない。ダントツで1位。
なにしろ、仕事場にあるものは
筆記用具、トイレットペーパー、トイレ洗剤、歯ブラシと歯磨きチューブ、コップと頭痛薬、掃除用スポンジにゴム手袋、雑巾、枕、携帯用ウォシュレット、レジ袋(ゴミ箱代わり)、寝袋、サンダル。
これだけなのだそうだ。
この部屋で漫画を描いているのである。
これでもまだ、常に「まだ捨てられるものはないか」と考えているのだとか。
素手でトイレを洗うようにしたらゴム手袋も捨てられるけど、素手で掃除をするのはやはり抵抗がある、とかそんなことで葛藤している。
この人にとって、素手でトイレ掃除をするのと、家にゴム手袋を置いとくのは同じくらいつらいことなのだ。

家の中だけではない。
車を持っていたときは、ヘッドレスト(座席の上にある、頭をもたれさせるとこ)を捨てて、車検が通らなくなった。
バイクを持っていたときは、泥よけが邪魔に思えてきたので捨てた。泥よけがないので雨の日は服が泥だらけになるが、余計な物がついているぐらいなら泥だらけになるほうを選ぶ。

本は、読んだページから破って捨てていく。
読みすすむにつれて本がどんどん薄くなってゆく。
ボールペンも、インクが減ってきたらペン本体を削って短くしてゆく。

完全にビョーキである。すごい。
ぼくは物を捨てられない人間なので、ちょっとうらやましい。


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カラスヤサトシ 『カラスヤサトシ 1〜5』

うまく説明できないんだけど、そこはかとなくおもしろい。
おかしな人のエッセイ漫画。特に初期は、完全に頭がおかしい人。
人形を修行させたり、誰も見ていないところで一人芝居をして現実との境がわからなくなったり。
わからないんだけど、なんとなくわかる気がする。子どもの頃の考え方がこんな感じだった。
中崎タツヤとかカラスヤサトシとか、変な人のエッセイを読むと、脳みそが揉みほぐされるような感じがしてスッキリする。


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地獄のミサワ 『カッコカワイイ宣言! 1』

ナンセンスバカ漫画。
長尾謙一郎『おしゃれ手帖』の初期に似ている(あの漫画は初期と中期と後期でまったく別の漫画になる)。
余計な説明、ツッコミを省いているのがいい。
吉田戦車にしても、うすた京介にしても、ツッコミをしだすとつまらなくなる。


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白輪剛史 『パンダの飼い方』

雑学本かと思ったら、がっつり珍獣・猛獣の飼い方を説明した本。
著者は動物のブローカー。
こういう本は他にちょっとないのでおもしろい。
クジラ以外なら何でも飼える(そして実際に取り扱っている業者がいる)というのがすごい。(クジラは陸にあげると自重でつぶれてしまうのだそうだ)。
しかし、広い場所が必要で、餌代も高くて、肉食獣なら他の動物を殺さなくちゃならなくて、鳴き声や強烈な臭いや世話に悩まされるような生き物を飼うなんて、物好きな人もいるもんだ。


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高野秀行 『異国トーキョー漂流記』

“日本に来た外国人”についてのルポ。海外旅行記は数あれど、在日外国人について書かれたものはそう多くない。
旅行記よりもこっちのほうがおもしろい。
盲人は目が見える人よりも日本語学習をしやすいとか、ヨーロッパ人は日本に「インド的な神秘」を求めてやってくるとか、大量のペルー人が同一の日系名を名乗って日本にやってくるとか、イラク人が故郷を捨てなければならない悲しみとか。おもしろい。
体験もおもしろいが、文章にユーモアがあるのでぐいぐい読める。


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岩明均 『七夕の国 (上・下)』

伏線がすごいという前評判を聞いたので期待していたのだが、ちょっと期待はずれ。
たしかに綿密に考えられているんだけど、『寄生獣』のようなスピード感やヤマ場や主人公の葛藤がなかった。
筋は無駄がなくて完成しているので、漫画より小説に向いているのかもしれない。


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宮部みゆき 『楽園 (上・下)』

『模倣犯』の続編というか後日談というかアナザーストーリーというか。
前半ははっきりいって退屈。中盤からは新たな事実がどんどん浮かび上がってきて、引き込まれた。『模倣犯』のときもこんな感覚だった。
が、ラストは腑に落ちない。悪い奴の罪があいまいになったままだからなあ。
構成は実によくできている。宮部みゆきは『模倣犯』のような小説はもう二度と書けないんだろうなあと思わされた。


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内田樹 『疲れすぎて眠れぬ夜のために』

感想というより覚え書き。
・その場の感情に身を委ねて行動することは利己的ではない
・耐えることを続けていると、みずから不快な道を選ぶようになる
・アメリカは、どこよりも女性が虐げられてきた国
・リスクを取るものだけが決定権を与えられる(リスクをとる≠リスクを負う)
・礼儀作法というのは、自分に対して強制力を発揮できる人間の前で仮面をかぶることにより、自己の利益を最大化するための技術
・家庭内暴力を受けて育った女の子は「愛しているから殴るんだ」と自分に言い聞かせるようになる。結果、将来的に暴力を振るう人間を夫に選ぶ。


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内田樹 『街場のアメリカ論』

覚え書き。
・世界の連続殺人事件の80%はアメリカで起こっている。
・日本にとって最大の軍事的危機は、中国が攻めてくることでも、北朝鮮がミサイルを撃ってくることでもない。「有事の際に日米安保条約が機能しないこと」である。だが日本はそれをありえないものとして、最大の危機の際の対応を定めていない。
・アメリカは、日本が中国・韓国と対立することを望んでいる。
・スーパーマン、バットマン、スパイダーマンなど、アメコミのヒーローは自分が正義のために戦っているのに周囲には理解されない。それはまさしく国際社会におけるアメリカの姿と重なっている。
・アメリカの政治システムは、人間がまちがえることを前提に「今より悪くならないようにする」というシステムを用いている。



by uso8000000 | 2010-12-23 20:53 | 本の周辺

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