大人は楽しい

とてつもない幸運のおかげ

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 リチャード・フォーティ『生命40億年全史』(草思社)

 40億年前に地球上に生命が誕生してから、人類が歴史を持つようになるまでを一気に叙述するという壮大なる科学書。

 帯に「生命がつむぐ物語の、この圧倒的な面白さ!」とのキャッチコピーあるが、これがちっとも大げさじゃない。
 40億年間という途方もない時間が織りなす雄大なドラマの前に、圧倒されっぱなしであった。

 筆者はあくまで慎重に、しかしときには驚くほど大胆に筆を進める。
 ユーモアを混ぜ、巧みなメタファーを散らし、自らの体験談や他の研究者の逸話をおもしろおかしく語る。そして、読み手の前にかつて地球上に栄えていた生物の姿をありありと甦らせてくれる。藍藻が広がったすべて緑色の世界、今では見られなくなった生物たちが泳ぎ回る海中世界、恐竜が闊歩する足下で哺乳類が身を潜めて暮らす世界。どれも、今目の前で起こっているかのように瑞々しく描写してくれる。




 もっとも印象に残った言葉。

「われわれは、善は栄えると思いたがっている。自分の人生に恩恵がもたらされると、たいていはそれを善行の報いとして説明したがる。もちろん、運もあることはある。しかし心の内では、よりすぐれた知性や才能がもたらした当然の恩恵であると信じている。たとえ絶好のタイミングで絶好の場所にいただけだとしても、その運をつかむためには並み外れた慧眼が必要だったと思いたいのだ」

 恐竜が滅んだのは、彼らが悪行のかぎりを尽くしていたからなのだろうか?
 海中では2億年近くにわたってサメがトップの座を占める捕食者であったが、彼らは努力の結果としてその地位を手に入れたのだろうか?
 かつて地球上の陸地はひとつながりだった。超大陸パンゲアと呼ばれるその大陸が分裂して、それぞれの塊は世界中に散らばっていった。南極大陸にもかつて哺乳類は生存していたが、大陸が南極点に達したことで彼らはすべて死に絶えてしまった。はたして彼らはどのような努力を怠ったのか?

 約2億5000万年前のペルム紀の大量絶滅では、海生種の96%、すべての種でみても90%以上が絶滅した。そのとき生き残った種は、生き残るために必要な能力を身につけたわけではない。持っていた特質が、“たまたま”生存に有利にはたらいたというだけである。

 我々が今ここに立っていられるのは、善行のおかげでも努力のたまものでもない。とてつもない幸運のおかげ、ただそれだけである。
 努力すればどんな夢でも叶えられる、どんな困難も乗り越えられる。そんな考え、おこがましいと思いませんか。






『生命40億年全史』から印象に残ったくだりを覚え書き。

・酸素は生物が生きるために必要不可欠なものだと考えられているが、全生物の祖先である原始細菌にとって酸素は致死的な有毒物でしかなかった。

・現在ハワイで細胞分裂をしている藍藻は、30億年前から分裂をくりかえしている。ほぼ不死身であると言える。

・殻の出現はわずか数百万年という短い間(生命史的にみるとこれは本当にあっという間)に世界中にいっせいに起こった。いっぺんに生物の多様性が増したように見えるが、これは生物のサイズが大きくなったから。それに伴って殻がつくられ、化石として残るようになった。競争・捕食の結果である。

・寄生という生き方はかなり早い段階で生まれた。寄生の構図の行き着く先はウイルス。

・オルドビス紀終わりの氷河期により、全動物種のうち半分以上が絶滅した。

・ほとんどすべての四肢類の指の数は5本だが、この本数に理由があるわけではなく、偶然の産物である。別に4本でも6本でもかまわない。事実、初期の四肢類には7本指のものもいた。

・サソリやカブトガニのように長い期間絶滅しない生物に共通する特徴は、大きめの子どもを少なめに生む、ということ。

・「宇宙から病原体がやってきた」というような激変を一度認めてしまうと、説明のつかない変化を地球外の要因で説明しようとする傾向に歯止めがかからなくなる。科学者は、手品師が帽子から花を出すようなやり方でその場しのぎの説明をしないし、やってはいけないとされている。
 だが、白亜紀末の恐竜などの大絶滅は隕石が原因とする説が濃厚。その考えが(反対はあったものの)結果的に支持されたのは、提唱したのがノーベル物理学賞受賞者であったから。

・イネ科の草は葉の付け根が成長するので、先端部分を食べられてもまた成長できる。したがって、ほとんどの草食動物はイネ科の草を食べる。

・ごく単純なつくりの石器が、大した変更をくわえられることもなく250万年前から100万年前まで使われつづけてきた。現代人から見れば、空恐ろしいほどの創造性の欠如である。この時代の人類は、考えなく本能的に石器を作っていたのではないだろうか。

・アフリカに住む人々の間の遺伝的変異は、他のすべての地域の間の差よりも大きい。たとえば漢民族と赤毛のアイルランド人、アボリジニとイヌイットの差よりも、アフリカ内の差のほうが大きい。

・家畜の乳を飲む習慣がなかったため、漢民族の大半は今でも乳製品を消化することができない。
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by uso8000000 | 2009-06-14 08:38 | 本の周辺

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