大人は楽しい

カテゴリ:本の周辺( 64 )




【感想】 竹信 三恵子『ルポ賃金差別』


『ルポ賃金差別』(竹信 三恵子/筑摩書房)
を読む。

・正社員が非正規雇用労働者を差別待遇する
 ↓
・非正規雇用のほうが安く使えるので、正社員の仕事がどんどん派遣やパートにとってかわられる
 ↓
・正社員が首を切られる
 ↓
・残った正社員も負担が増える

 非正規雇用を差別することが自分の首も絞めているということを正社員も自覚しなければならないね。


 ぼく自身、アルバイトの多い職場で働いていたが、
 正社員による「バイトは責任感がないから」という発言をよく耳にした。
 でも「責任感」という不確かな基準(現在の労働ではなくまだ起きていない不確定の未来の行動)で評価をするのはナンセンスだと思う。
 話の順序からいって「責任感があるからポジション、給与が与えられる」ではなく「ポジション、給与が与えられるから責任を持つ」のはずだし。


 労働という分野では、法や市場の論理が正常に機能しないことはわかりきっているわけだから、結局、労働組合が個別に闘っていうしかないんだろうなあ。
 非正規雇用が増えれば労組も力が弱くなるから難しいわけだが。
 まずは正規/非正規 間の差別をなくすことが先かな。

 最近「ブラック企業の見分け方」なんて文章をよく目にするけど、
いちばんの見分け方は「労組がちゃんと機能しているかどうか」だろうね。


竹信三恵子『ルポ賃金差別』
『ルポ賃金差別』(竹信 三恵子/筑摩書房)

(Amazon詳細ページ)


-
[PR]



by uso8000000 | 2012-06-03 18:58 | 本の周辺

【感想】 アルコ『俺物語』

アルコ×河原和音
『俺物語』1巻

を読む。

どっかで絶賛されていたので普段読まない少女漫画を手に取ったのだが、大当たりだった。はじめの10ページくらいで一気に引き込まれた。

女性の描く男性って、イケメンで、女にモテて、オシャレで、クールで、でもハートは熱くて、夢をまっすぐに語って、好きな女の子には優しくて、
つまりは男から見たら「いけすかない野郎」である。

この漫画の主人公は逆。イケメンじゃなくて、ごつくて、バカで、がさつで、無骨で、男との友情には厚くて、男からは「おれが女だったらこいつと付き合いたい」と言われるけど女からはまるでモテないというタイプ。
この主人公が実に魅力的で、終始にやにやしながらあっという間に読み終えた。
そうなんだよ、ほんとにいい男ってのはこういうやつなんだよ、どうして世の女性たちはわからないんだよ、と声を大にして言いたい。

でも男性の描くヒロインも、ぶりっ子で、天然気取りで、頭からっぽで、女から見たら気に入らない女なんだろうなあ。


アルコ・河原和音『俺物語 1』
アルコ×河原和音 『俺物語 1』

(Amazon)



-
[PR]



by uso8000000 | 2012-04-29 10:43 | 本の周辺

電子書籍と図書館

札幌市中央図書館が電子書籍の貸出をおこなっているそうだ。

電子書籍を貸し出すことで利用者が得られるメリットは以下の通り

・データで送受信できるので、利用者が図書館に足を運ぶ必要がない。

・データは容易に複製可能なので貸出制限がない。借りたい人は待たずに借りられる。

・期限が切れたら自動的に読めなくなるように設定することで、利用者が返却に行く必要がない。



これ、出版界にとってはとんでもないことですね。
だって図書館で本を借りずに買う理由って、
1.気に入った本を手元に置いときたい
2.図書館だと読みたいときに本があるかどうかわからない
3.返却に行くのが面倒

ってことだろうけど、このうち2と3の理由は解消されちゃうわけだからね。

だいたいこれ、「本を借りる」と表現していいのだろうか。
返す必要がないわけだし、期限が切れたら読めなくなるっていっても、またすぐにデータを受信すればいいわけでしょ?
実質手元に置いとくのと一緒じゃない?
だとすると1の理由も解消されちゃうね。

ということで、「貸す」と言いつつ実際は本の情報を無料で配ってる札幌市中央図書館。
当然のことながら出版界の人間は猛反対してます。


出版社の人間が「こんなことされたら出版社はつぶれてしまう」と言っていた。
でもこれも独りよがりのピント外れな意見。
だって大半の読者からしたら出版社がつぶれたって平気なんだから。
出版社がつぶれるなら著者が直接配信したらいいんじゃない? ってのが大方の意見だと思う。
出版社の仕事は大まかにいって「企画」「編集」「出版」だけど、「企画」「編集」だけでいいんじゃない? ってのが一読者の考え。

正しい反論はこうです。
「図書館が無料で本の内容を配信しても著者にお金が入らない。
 書き手の権利が保護されないと良質なものを書く人がいなくなる」


これなら一般の読者の感情にも訴えられる。

でも、はたして金銭が入ってこなくなったときに人がものを書かなくなるのかは疑問。
無料でもいいから、一人でも多くの人に読んでほしいって考える書き手はいっぱいいると思うなあ。



ぼくの私案。
「図書館で電子書籍を手に入れたい人は、『なぜ読みたいのか』『どうしてその本じゃなきゃだめなのか』『なぜ今読む必要があるのか』をレポートとして提出しなければならない。司書がレポートを読んで、合格した人にのみ配信する」

こうすれば、研究などで高価な本が買えない学生や、ひまでひまで仕方ない人は無料で読めるし、そうじゃない人はお金を出して本を買うようになると思う。
電子書籍で配信するようになれば司書の仕事も減るわけだから、これぐらいやってもいいと思う。

いかがでしょう?


-
[PR]



by uso8000000 | 2012-02-29 08:11 | 本の周辺

【感想】 中村 計『佐賀北の夏』


 中村 計
『佐賀北の夏 甲子園史上最大の逆転劇』
(新潮文庫)


今も高校野球ファンの脳裏に鮮やかな記憶として焼き付いて離れない、2007年夏の佐賀北高校の優勝。
ほぼ無名の公立校が次々に甲子園常連校を破っていく姿は、当時のベストセラーにちなんで「がばい旋風」と称された。

無欲の学校がひたむきさと勢いだけで勝ち上がった、というような語られ方が多かった。
ぼくもそう思っていた。
だがこのノンフィクションを読んでそのイメージはいとも簡単に覆された。
佐賀北高校は、実にしたたかなチームだった。

強い選手が集まったわけではない。
設備に恵まれていたわけでもない。
練習時間がたっぷりあったわけでもない。
そこで佐賀北の百崎監督は、「弱くても勝てるチーム」を目指した。

選手はシビアにランク分けした。
自由に打っていい選手と、つなぎに徹する選手。
つなぎの選手には、自由に打つことを禁じた。一打逆転のチャンスでもバントをさせた。「おまえは打てない」と言い聞かせ、プロ野球のように役割を明確に分断した。

そこにあるのは徹底した管理野球。
選手たちと監督は何度も衝突し、前年夏も秋季大会も春季大会も、結果を残せなかった。
だが、衝突を重ねて監督の考えが選手間に浸透するにつれ、佐賀北は勝てるチームに変わってゆく。

最大の番狂わせと言われた準々決勝の帝京戦、
奇跡ともいえる逆転満塁ホームランを生んだ決勝の広陵戦。
鋭い相手戦力の分析と、自チームの力を客観的に見た結果の綿密な作戦がその裏にはあった。

たとえば今もって「疑惑の判定」として語られている、広陵の野村投手が8回に投じた1球。
ほとんど誰が見てもストライクじゃないかと思われたが、佐賀北の反撃ペースに飲まれるかのように審判のコールは「ボール」。結果的に、その後の逆転満塁ホームランにつながった。
「雰囲気」「甲子園の魔物」というありきたりな言葉で片付けられるこのプレイにも、著者はさまざまな伏線があったと分析する。
まず、甲子園では地方予選よりもストライクゾーンが広くなること。
3回戦までは、1日に4試合をこなさない日もある甲子園では、ストライクを入りやすくして試合時間を短くしなくてはならないのだ。
だが決勝では時間に余裕があるため、それまでに比べてストライクゾーンが狭くなる。これまではストライクをとってもらっていた球が、ボールとなってしまうのだ。
さらに佐賀北の打者・井手くんは、ストライクぎりぎりの球をボールにする練習をしていた。
低めの球が来たら、ほんの少しだけ伸び上がって膝の位置を上げる。
高めの球なら、ごくわずかにかがむ。
手が出なくて見逃した球でも、決して「しまった」という顔はしない。ボール球だから自信を持って見逃したという顔をつくる。
佐賀北の「つなぎに徹する選手」の仕事。これが史上最大の逆転劇を呼び込んだ。
帝京のようなスターぞろいのチームにはできない野球だった。


あの試合の裏にはこんな駆け引きがあったのか。
このくだりを読んだだけでも、本を買ってよかったと思える。

佐賀北のいいところ、悪いところを存分に書いている。
当事者へのインタビューを通じて書いたルポルタージュは(特にスポーツものなどは)ふつう、褒め言葉しか並ばないものだ。
だが、佐賀北の監督は失敗や誤りもきちんとさらけ出している。そして著者もそれに応えて素直に文章にしている。
こういう点が、2007年の佐賀北というチームの魅力であったのだとつくづく思う。


中村 計『佐賀北の夏 甲子園史上最大の逆転劇』
中村 計
『佐賀北の夏 甲子園史上最大の逆転劇』

(Amazon詳細ページ)

[PR]



by uso8000000 | 2011-08-11 05:05 | 本の周辺

【感想】 堂場 瞬一『大延長』

堂場瞬一 『大延長』(実業之日本社文庫)


 堂場瞬一のスポーツ小説はおもしろいという噂を聞いて読んでみた。
 なるほど、おもしろい。

 舞台は高校野球選手権大会。
 物語は甲子園での決勝戦、それも延長15回引き分け後の再試合からはじまる。いきなりクライマックスだ。

 東京代表 VS 新潟代表。
 甲子園常連校 VS 初出場校。
 スポーツに力を入れている私学強豪校 VS 地元では有名な公立進学校。
 大打者を擁する打のチーム VS 豪腕エースと鍛えられた守備で勝ち進んだ守りのチーム。
 規律のとれたチーム VS 選手の自主性を重んじるチーム。
 プロで活躍して日の当たる人生を送ってきた監督 VS ケガのために野球をあきらめなければならなかった監督。

 ことごとくカラーの異なる両校の対決。
 さらに、部員の喫煙発覚、エースの怪我というハプニングが試合前の両校を襲う。

 試合開始前からこれだけのドラマを用意してあるのだが、試合がはじまればもっとすごい。
 箕島ー星稜の執念の同点劇、松山商ー熊本工の奇跡のバックホーム、横浜ーPLのサインの読み合い、智弁和歌山ー帝京の9回の攻防、佐賀北ー広陵の逆転劇……。近年のありとあらゆるドラマを、これでもかというぐらい試合の中に詰め込んでいるような印象。

 ここまでやったらやりすぎだ、こんなドラマが実際に起こるわけないと思ってしまうのは、高校野球を知らない人だ。
 誰もがこんなできすぎたことが起こるわけがないと思っていたことが実際に起こるのが甲子園という舞台なのだ。

 さまざまな人間ドラマが用意されているが、話の中心はあくまで野球。
 これほど真っ正面から野球を描いた小説は、実はけっこう少ないのではないか。
 甲子園で観戦しているときのように思わず手に汗握ってしまう小説。



 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆

 第93回高校野球選手権大会が開幕した。
『大延長』を読んだので、ぼくの高校野球熱も十分に盛り上がっている。

 さっそく好試合が続いていて、いい大会になりそうだ。
 今回は初出場校が多いので、とんでもない番狂わせも起こりそうだ。


 いろいろと言いたいことはあるが、いちばん言いたいのは
「震災を持ち込まないで」ということ。

 花巻東(ちがったかも)の監督が、
「甲子園まで来たのだから震災のことは忘れてプレーさせてやってほしい」
と言っていたのが印象的だった。

 まったくの同感。
 選手たちは被災者のために野球をやっているのではない。そんなゲスい目的ではない。
 自分たちが気持ちいいから一生懸命に野球をやる。これほどすばらしいことがあるだろうか。

 被災者が、地元高校の活躍を見て勇気をもらう。そりゃそんなこともあるだろう。
 地震や津波で親しい人を失った選手もいるだろう。そんなことは知ってる。
 だけど、背負っている者は誰にでもある。
 家族を失った選手だって、飼い犬に元気がない選手だって、彼女にいいとこ見せたい選手だって、同じくらい努力してきて同じくらい勝ちたいと思っているはずだ。

 不幸な目に遭ったからがんばるはずだと思うのは、選手に対して失礼だ。
 そんな甘っちょろい考えで甲子園には来ることができない。


 わざわざ他人の境遇を不幸がって同情するのは、高校野球の魅力を知らない人だ。
 口にしなくたって、その選手のすべてが気迫で伝わってくる。高校野球とはそういうものなのだ。



堂場瞬一『大延長』
堂場瞬一
『大延長』

(Amazon詳細ページ)

[PR]



by uso8000000 | 2011-08-07 20:59 | 本の周辺

【感想】 開高 健『ベトナム戦記』

e0025267_2050047.jpg

開高健『ベトナム戦記』(朝日新聞出版)
e0025267_2050321.jpg

開高健『輝ける闇』(新潮社)

『ベトナム戦記』はノンフィクション、『輝ける闇』は小説だが、どちらも開高健が戦時下のベトナムを訪れたときの体験をもとにしている。

正直、開高健がベトナムに行っていたことなど知らなかった。
ただの釣り好きのオヤジだと思っていたのだが、この2作を読んでイメージががらっと変わった。彼こそ、作家の中の作家である。

兵士でも記者でもカメラマンでもないのに、戦争まっただなかのベトナムへ出かける。
ゲリラに命を狙われながらアメリカ軍と行動を共にする。最前線にもついていき、ベトコンの一斉攻撃を受ける。部隊200人のうち、生き残ったのは開高健をふくむ17人だけだったというから、銃も持たない開高健が生還できたのは奇跡だと言ってもいい。

誰もがやめておけといい、自らも無駄だと思う。
それでも書くために行動せずにはいられない。書くことの前では自らの命など大きな意味を持たない。
おっそろしいほど筋金入りの作家だ。
その文章は、ユーモアを交えながらも終始熱を帯びていて行間から饐えたにおいが漂ってくるようだ。

ふつう、文章には緩急がある。
クライマックスでは緊迫感が感じられるが、ほとんどの文章はそうではない。読むのに力は要らない。緩急がなければ読むほうは疲れるし、書き手はもっと疲れる。
だがこの2作の場合、文章は徹頭徹尾緊張状態にある。
常に死と隣り合わせにある文章だからだろう、一文字たりとも読み飛ばすことを読み手に許さない。

これこそが本物の作家が命を削って書いた文章なのか。
久々に文章の持つ力を感じてぞっとした。


開高健『ベトナム戦記』

(Amazon詳細ページ)

開高健『輝ける闇』

(Amazon詳細ページ)


[PR]



by uso8000000 | 2011-08-04 21:07 | 本の周辺

銀の匙 〜岩波文庫じゃないほう〜

e0025267_5241.jpg
 荒川 弘『銀の匙』(小学館)

 『鋼の錬金術師』の荒川弘による新連載。
 ファンタジーアクション漫画だった前作とはうってかわり、農業高校を舞台にした青春コメディー。さすがは少年サンデー。


 農大を舞台にした『もやしもん』みたいなのを想像していたが、どちらかといえば『動物のお医者さん』のような雰囲気。農業はあくまで傍流で、人間ドラマを軸にしたいみたい。
 まあ『もやしもん』は農は農でもバイオだもんね。


 北海道が舞台なので牧畜、酪農が中心だが、「動物かわいい!」だけの話にはならず、屠殺などのシビアな現実もしっかり描いているのはさすが。
 ぼくとしてはこういう方向で、日本の農業が抱える問題などを描いていってほしかったのだが、そこはやっぱり少年誌。牛や馬や豚とのふれあいを通じて高校生が成長していく……というありがちな成長ストーリーになってしまっているのが残念。
 むりやり青春の悩みをねじこんできていて、農業のリアルな現実を描いているシーンと青春の葛藤の描写がちぐはぐな印象を受ける。

 作者の実家が農家なので現場の視点が強く入っているのも少年漫画にふさわしいか。
 青年漫画だったらもうちょっと蘊蓄の要素が強くないとね。

「農業高校漫画」というくくりにとらわれずに、いち少年漫画として読めばけっこうおもしろい。



 とはいえ、1巻は大慌てで登場人物を出してきて、高校とキャラクターの紹介に終わっただけ。2巻あたりからようやくストーリーが動き出しそう。
  作品の善し悪しを判定するのはまだ待ちたい。



薫風のフォト喜利
[PR]



by uso8000000 | 2011-07-22 05:25 | 本の周辺

となりの関くん

e0025267_19573748.jpg

 森繁拓真「となりの関くん 1」(メディアファクトリー)



 主人公(女の子)のとなりの席の男の子が授業中にずっと遊んでいる、というだけの地味なギャグ漫画。

 セリフも少ないし動きもあまりないのだが、センスが随所に光っている。
 大笑いはないが、ずっとにやにやしながら読んだ。

 ぼくも授業中さまざまな遊びをしていたので、ノスタルジーを感じる。

 ワンシチュエーションコメディなのでどこまでネタが続くかが心配(1巻の後半で既にネタに困っているっぽい)。



 この作者、東村アキコ(『ママはテンパリスト』『海月姫』『主に泣いてます』などの作者)の実弟らしい。

 言われてみれば……と思いながら姉弟の漫画で似ているところを探したが、ギャグ漫画ということ以外に共通点がまったくない。
 絵も話の運び方も笑いの質も。
 これだけ身近にいながらお互いぜんぜん影響されないってのもすごいな。


薫風のフォト喜利
本日お題8締切です。
[PR]



by uso8000000 | 2011-07-06 20:07 | 本の周辺

貧困大国アメリカ

e0025267_11544032.jpg
『ルポ 貧困大国アメリカ』(堤 未果 /岩波書店)
e0025267_11544311.jpg
『ルポ 貧困大国アメリカⅡ』(堤 未果 /岩波書店)

を読む。
どちらもおもしろい。ぶん殴られるような衝撃を受けた。

世界のトップをひた走っているように見えるアメリカが、実は貧困に苦しんでいる国民だらけだというレポート。
それも、サブプライムローン問題に代表されるような不法入国者や移民だけでなく、中間層の人間がどんどん転落していっているという事実。


以下、覚え書き。

・日本で盲腸の手術をすると、保険適用で手術代64,200円+入院費数万円だが、アメリカでは100万円を超える。
 病院の初診料が数万円、入院すると部屋代だけで一日に20〜30万円。
 入院出産するだけで150万円かかるので、日帰り出産する女性も多い。


・アメリカの総人口は世界の5%だが、囚人の数は世界の25%。
 刑務所は民営化され、囚人を時給約40円という超低賃金で働かせることで刑務所ビジネスは多額の利益を挙げている。囚人労働者の数を増やすために、ホームレスが次々と逮捕されていく。州は予算を使い、ホームレスを取り締まる。その予算があれば多くのホームレスに住居を供給することができるにもかかわらず。


・アメリカの公立大学では、10年間で学費が59%も上昇した。
 四年制大学の学生は奨学金や学資ローンから、平均で約200万円の学費を借りている。


・学費が支払えない家庭の高校生には軍からリクルートがある。軍に入れば医療保険に加入でき、学資ローンも肩代わりしてもらえる。
 彼らは十分な説明もないままにイラクなどの危険な戦地へ派兵され、前線での活動を余儀なくされる。
 帰ってきても貧困は変わらない。アメリカの350万人以上のホームレスのうち、50万人は帰還兵。


・貧困で苦しむ人に戦争請負会社から勧誘がある。イラクやアフガニスタンなど戦地での悪条件の仕事だ。多くは体を壊し、現地で稼いだ金のほとんどは帰国後の医療費に消える。
 さまざまな国籍の労働者が集まる。武器も防具もいっさい与えられず、戦闘地帯での仕事に従事する。
 派遣労働者は民間人扱いなので、戦死者としてはカウントされないからだ。
 米軍は、戦闘そのものすら民間の戦争請合会社に業務委託する。
 派遣された「傭兵」は軍人ではなく民間人なので、国際法や軍法で裁かれることがない。戦地でどんな非人道的な行為をおこなったとしても。


以下引用。
「もはや徴兵制など必要ないのです」
「政府は格差を拡大する政策を次々に打ち出すだけでいいのです。経済的に追いつめられた国民は、黙っていてもイデオロギーのためではなく生活苦から戦争に行ってくれますから。ある者は兵士として、またある者は戦争請負会社の派遣社員として、巨大な利益を生み出す戦争ビジネスを支えてくれるのです。大企業は潤い、政府の中枢にいる人間たちをその資金力でバックアップする。これは国境を超えた巨大なゲームなのです」




 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆

 ぞっとするほどおもしろい。
 著者は私感をはさまずに、淡々と事実や人々の声を拾ってゆく。ルポに徹しているがゆえに、数字や法律の裏に隠れた人々の苦しみがありありと浮かび上がってくる。

 なぜアメリカがこんな国になってしまったのか、詳細はこの本を読んでもらうとして、一言で言うなら
「自由主義という病」であろう。

 アメリカは自由の国だ。誰にでもチャンスがある。

 これこそがアメリカという国家が抱える最大の病気だ。
 たとえば国民皆保険制度を導入しようとすると、ただちに「自由を奪う気か」という声が上がる。「自由」が「転落する自由」であることに気づかず、セーフティーネットを外してゆく。
 最近はこれに「テロとの戦い」が加わった(かつては「共産主義との戦い」だった)。
「テロとの戦い」を理由に、人権が制限されつつある。


 いちばん恐ろしいのは、このアメリカの姿が日本が向かっている方向ではないかということ。

 近年の日本の動きを見ていると、どんどんアメリカ的自由主義に向かっているように思えて仕方がない。
「自由」「チャンス」という耳障りのいい言葉にだまされて国民の9割が貧困に苦しむ国にならないことを痛切に願う。
[PR]



by uso8000000 | 2011-07-05 11:55 | 本の周辺

築先生の次回作『スキャンダル英国王子ヘンリー』にご期待ください

 ネット大喜利界で唯一収入がある渡邊築先生が週刊少年ジャンプに連載している『メルヘン王子グリム』の単行本1巻がついに本日発売されました。


 いやーめでたい。
 千里の道も一歩から。こち亀めざしてがんばってくださいと思いながら今週のジャンプをパラパラとめくると……。



「渡邊築先生の次回作にご期待ください」 の文字が……。



 記念すべき初単行本の発売日に最終回だなんて、まったく夢も希望もありませんね(メルヘンなのに)。
 これでネット大喜利界に定職のある人がついに1人もいなくなってしまいました。




e0025267_14421124.jpg

 書店員としてのせめてもの応援として、『銀魂』と『HUNTER×HUNTER』という人気作ではさむようにして展示してやりました(応援というよりひどい仕打ちかもしれない)。


 渡邊築先生、次回作に期待してます! 『グリム』の連載中、ずっとジャンプ読んでなかったけど!
[PR]



by uso8000000 | 2011-07-04 14:53 | 本の周辺

移転しました。新しいブログはこちら http://dogdogfactory.blogspot.jp/
by uso8000000
プロフィールを見る
画像一覧
S M T W T F S
1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31

ブログリンク

USO-800大喜利
トップページです。

大喜利カレンダー
べとんさん運営の、大喜利やる人には欠かせないカレンダー

まるで銃弾浴びてるかのよう
短歌

三人一句
昔やってた遊び



ジャックハマー
ミニゴバさんの文士ブログ
眼球の裏窓
眼球支点さんの対話式ブログ
大友・ごむの「なりきりアンドロイド」
大友ヒップホップさんの激辛ブログ
まち子よ
フードさんのドギツイブログ
ひぐまの左手
ニッポニアさん・なゆらさんのひょっとこキャンバス
菜果牛乳3
To菜果さんの爆弾ブログ
なんとなく
あいつさんのハレンチブログ
あんにゅい三昧
あんにゅい竹さんの皆勤ブログ
土砂降りの脂の中で僕ら
えこなさんの痛快ブログ
忍者ムラサキのおしゃべりデート
忍者ムラサキさんのおしゃべりブログ
暴投戦士(笑)
暴投戦士(株)さんのしっかり者ブログ
さんえいち(戒)
雨乞い番長さんの番長ブログ
リッスン・トゥー・ハー
なゆらさんの名文ブログ
いわし13号
いわしさんの大衆魚日記
今夜は金玉について語ろうか
たかさんの変態ブログ
☆一瞬の輝き
kanon560さんの追想ブログ
サムライチョップはパンチ力
サムライチョップさんのアニメ化ブログ
塩で揉む
しりこだまさんの汚れブログ
はた織り鶴の一撃
ガス電池さんのハイセンスブログ
ヒメジャノメートル
ラマオさんの滅裂ブログ
Kera-ma-go
んじょもさんの暗黒青春ブログ
本多おさむの「入りやすい穴、探してます」
穴さんの入りやすいブログ
all or Nothing radio Show
22世紀からきましたさんの22世紀からきましたブログ
七分袖モダンガール
カシスさんのアナクロニズムブログ
孤立無援の刺草
SANATOさんの寸鉄人を刺すブログ
小指をつないで
お米さんのよく噛んで読めブログ




【管理人プロフィール】
スーパー真心 20代 兵庫県在住

検索

最新の記事

移転のお知らせ
at 2015-06-04 00:18
海を渡れ
at 2013-03-29 21:37
海洋堂フィギュアミュージアム
at 2013-02-24 23:49
仮説
at 2012-11-15 21:37
つげぐち
at 2012-10-20 21:58

ファン

ブログジャンル

画像一覧