大人は楽しい

2010年 11月 16日 ( 2 )




しつこいぐらい水嶋ヒロの話

 しつこいけど、まだまだポプラ社小説大賞の話。

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 あれやこれやですっかりブラックなイメージがついてしまったポプラ社ですが、ぼくだけはポプラ社の味方です。
 そんなポプラ社を誰よりも愛するぼくが、第5回ポプラ社小説大賞選考会の模様を(ほんの一部推測をまじえて)再現してみました。

 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ 


A「それではこれより第5回ポプラ社小説大賞の選考会をおこないます」

B「なにしろ2,000万円がかかった賞ですからね。慎重に選考しなければなりませんね」

C「そうです。なにしろ、出版界の未来を担う人材を育てる賞ですからね」
(※ ポプラ社は高額賞金の理由を「受賞後数年間執筆に専念できる環境を作り、作家として大きく育っていただくために、賞金は2000万円としました」と説明している)

A「この人なんかどうですか。斉藤智さん」
(※ 水嶋ヒロは、応募時「斉藤智」のペンネームで応募したとされている)

B「いいんじゃないですか。「人間の命とは何か? 人間の価値とは何か?」という深遠なテーマに、ダイナミックな物語構成で鋭く切り込んでいるところがすばらしいですよね」

C「じゃあ誰か知らないけど、この人に大賞をあげちゃいましょう!」
(※ ポプラ社によると、授賞するまで作者が水嶋ヒロだとは知らなかったとのこと)

A「ちょっと待ってください。これ1作だけで終わりではないんですよ。デビュー作だけで2,000万円は回収できませんからね。今後活躍してもらうためにもどういう人かしっかり調べないと」

B「そうですよ。この人が指名手配犯かもしれないし、病気で余命半年かもしれません。今後作家として活動できるかどうかちゃんと調べないと」
(※ 新人文学賞は新人の育成を目的としているので、通常作家として続けられる見込みがない人には授賞しない。また、盗作ではないかの確認などもしなければならないので、受賞者を決定する前に出版社から連絡をとるのが普通)

A「まあ連絡まではしなくていいんじゃないんですか。めんどくさいし。
 募集要項に『職業』と『略歴』の項目がありますからね。それを見ればだいたいの人となりがわかるんじゃないですか」
(※ ポプラ社は授賞するまで作者と会っていないようなので、当然おこなうべき確認を“うっかり”忘れてしまったものと思われる)

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C「えーと……。職業は『俳優・タレント』。略歴は『ファッションモデルとして活躍。その後俳優に転じ、『仮面ライダーカブト』で主演を務める。その他、『ごくせん』『花ざかりの君たちへ』などの多数のドラマに出演』か。よし、誰だかわからないけどこの人に賞をあげよう!」
(※ ポプラ社によると、授賞するまで作者が水嶋ヒロだとは知らなかったとのこと)

A「ちょっとちょっとCさん! 何読んで……ちがった、何でっちあげてるんですか!
 そこには何も書いてないでしょ」
(※ ポプラ社によると、水嶋ヒロの職業と略歴は空白になっていたとのこと)

B「そうですよCさん! そこは空白でしょ!」
(※ ポプラ社によると、授賞するまで作者が水嶋ヒロだとは知らなかったとのこと)

C「だって書いてあるじゃん」

A「そこは空白!!」

C「じゃあそういうことにしときましょうか。
 しかし応募書類に不備があるってことですよね。これじゃあ賞をあげることはできないですよね」

A「でもいいんじゃないですか。みずし……ゴホン、すごくいい作品だし」
(※ 履歴書の学歴と職歴欄が空白の応募者を、一度の面接もせずに社員として採用する経営者だっていないとはかぎらない)

B「そうだよね。経歴なんか関係ないよ。大事なのは作品の中身だよ! たとえ指名手配犯でもいいじゃない」

C「さっきと言ってることがちがわないですか?」

A「そんなことありませんよ」

C「でもこの作品、未完成なんですよね……」
(※ 水嶋ヒロは9月に芸能活動を休止した際、「本格的な文学作品をほぼ書き上げている」と語っている。つまりポプラ社小説大賞応募締切の6月の時点ではまだ作品は完成していない)

A「そんなこと、どうだっていいじゃないですか!」

B「たしかに冒頭の1行しか書いていませんよ。でもこれに編集部がちょっとだけ手を入れれば立派な作品です!」

C「つまりゴーストラ……」

A「ちがいます! 校正ですよ校正! どんな作家だって校正チェックがあるのは当然ですよ」

C「でも1行しか書いてないんでしょ」

A「だけどほんとにいい小説だったんだもん!」

B「「人間の命とは何か? 人間の価値とは何か?」という深遠なテーマに、ダイナミックな物語構成で鋭く切り込んでいるところがすばらしいんだよ!」

C「だけどすばらしい作品を書いて、人生を賭けて作品を投稿してきた他の応募者たちに失礼じゃない?」

A「なにそれ? その無名の人たちが出版界の未来を担えるの?
 これからの文芸界を支えられるのは、出せば金になる斉藤智様だけだろうがよぉ!!」
(※ ポプラ社によると、授賞するまで作者が水嶋ヒロだとは知らなかったとのこと)


 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ 

 ぼくだけはポプラ社の味方だよ!
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by uso8000000 | 2010-11-16 20:02 | 本の周辺

さらば理論社

 児童書の出版社である理論社が民事再生法の適用を申請した。
 出版不況と言われ、年間数十社が倒産している出版界においては、とりたてて騒ぐほどのことではない。
 理論社は中堅の出版社だが、最近はやや迷走ぎみだったのでこのニュースを聞いても「ふうん。理論社もか」という程度の感想しか湧かなかった。


 出版社が倒産をすると、基本的に本の返品ができなくなる。
 これは本屋にとってはなかなか困る事態だ。
 返品できないんなら売ればいいじゃん、と思うかもしれないが事はそう簡単ではない。
 まず、本屋は返品することを前提に本を注文している。
 どーんと平積みしたほうが見栄えがいいから、「5冊くらい売れるだろうな」と思っても10冊注文する。
 これは実際不思議なところで、たくさん置いといたほうがよく売れるのである。
 10冊置いといたら5冊売れた。じゃあはじめから5冊だけ置いとけば完売するのかというと、そうでもない。3冊くらいしか売れないのだ。たくさんある→よく売れてる→おもしろいにちがいない、という購買者の心理があるのかもしれない。


 そんなわけで、書店はちょっと多めに発注する。ある程度は返品することを見越しての発注だ。
 特に理論社が扱っているのは児童書である。
 絵本は、子どもが触るものなのでボロボロになりやすい。売り物だから大切に扱いなさいよ、と子どもに教える親など皆無に等しい。落とす、引っ張る、投げる、破る。商品によっては、販売数と破損返品数が同じくらいだったりする。


 だから本屋は、返品できない出版社の商品は極力置きたくない。
 岩波書店(ここの本はすべて返品不可だ)の本が大きな本屋にしか置いてないのはこういう理由である。
 倒産した出版社の本は(たとえ売れるとしても)置きたくない。もし売れても、補充はしない。
 というわけで、倒産から1年もすればその出版社の本は書店からほぼ姿を消す。

 だから理論社の本も入手が困難になるわけだが、理論社は良書も出しているのでこれはなかなか惜しい。


 理論社には「よりみちパン!セ」というシリーズがある。
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 各界の著名人が13歳くらいの少年少女に向けて、生きかたを説いた本である。
 これは実に冒険的な企画なので、良書がけっこう混ざっている。

 なにしろ執筆陣がすごい。
しりあがり寿、小倉千加子、バクシーシ山下、叶 恭子、杉作J太郎、西原理恵子、辛酸なめ子、中村うさぎ……。
 子どもに偉そうなことを言えない(言ってはいけない)人たちばかりである。
 なかでも稀代の名著はみうらじゅん『正しい保健体育』である。
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 男子の脳は金玉にのっとっている、女子は子宮を使って宇宙人と交信している、などこの世の真理が網羅されている。
 よくこの本を「児童書」のラベルを貼って出版できたな、という本だ。

 「よりみちパン!セ」シリーズのおもしろさは、ばかばかしい本を児童書としてカテゴライズしたことにあるが、同時にそれは「よりみちパン!セ」シリーズがぜんぜん売れなかった要因でもある。
 大人が手にとっても「ふりがなだらけだな。子ども向けの本か」とろくに読まずに本を置いてしまう。
 子どもが手にとったって、みうらじゅんのおもしろさがわかるわけがない。

 試みはおもしろかった。
 理論社は星新一の児童書バージョンも出していたが、これもやはり失敗だった。
 星新一は、子どもが新潮文庫を手にとって大人になったような気分にひたれることもその魅力のひとつなのである。
 児童書にしてしまったらまるでおもしろくない。大人向けだから含蓄があるのであって、絵本にしたらまさに子どもだましである。

 児童書の版元でありながら挑戦的であろうとした理論社。
 その姿勢が原因で倒産したのだから、非常に残念である。絵本は保守的でなければならないようだ。


 少なくともクソポプラ社なんかよりはずっといい出版社だったので倒産が残念である。
(いや、ポプラ社もいい出版社だったんですよ。水嶋ヒロに賞を与えるまでは)
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by uso8000000 | 2010-11-16 17:45 | 本の周辺

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