大人は楽しい

2006年 09月 15日 ( 1 )




遺伝子とセックスについて考える

 リチャード・ドーキンス著『利己的な遺伝子』を読む。
 生物(もちろんヒトも)の行動は、遺伝子が自分と同じ遺伝子を残すための戦略によって決定されている、という内容。
 三十年前に上梓された本だが、今読んでも十分おもしろい。

 第9章「雄と雌の争い」の一部を要約してみよう。



 動物が子どもを産んだとき、その子を育てることは遺伝子の利益にかなうのか?

 遺伝子の生存にとってもっとも有効な戦略は、子どもを生むだけで、その子の育児を他の個体に押しつけることである。
 なぜなら、より多くの遺伝子を残すためには、より多くの子孫を作らなくてはならない。
 仮にオスがメスに子を産ませ、子育てをすべてメスに押しつけたとする。するとこのオスは、他のメスと子を作ることができ、より多くの遺伝子を残すことに成功するのである。
 もちろんメスにとっても、オスに子育てを押しつけることが最良の戦術である。
 ところが、オスとメスの両方が育児を放棄してしまうなら、子はただちに死んでしまうであろう。これは遺伝子を残したいと思う個体にとって得策ではない。

 ところで、子どもを育てる際に親が与える投資(労働力、時間など)はオスとメスではどちらが多いだろうか。
 答えは当然メスである。
 オスが精子を作るコストと、メスが卵子を作るコストを比較すれば明白である。
 人間の場合だと、男は1日に数億の精子を作ることができるが、女は1ヶ月に1個の卵子しか作ることができない。
 さらに出産に関して言えば、その違いはさらに大きくなる。
 また人間の例をあげると、女は10ヶ月間子どもを胎内で育てなければならないが、男にはその拘束がない。理論的には、オスは無数の子を作ることができるのだ。

 ここで、子どもが生まれた後、オスが子を棄てて逃げたケースを考える。
 残されたメスに選択肢は二つしかない。自分だけで子を育てるか、あるいは自分も子を棄てるか、だ。
 後者の場合、両親から棄てられた子は死ぬ。これはオス、メス両方にとって損である。
 ただしその損失はメスのほうが大きい。メスのほうがその子の出産までに投資した資源(卵子、時間、労働力)が大きいからである。
 したがって、オスに棄てられたメスは仕方なく自分だけで子を育てることになる。
 とすると、オスは子育てに労働力を投資することなく子孫を増やすことができるので、子育てには参加せずに他のメスと新たな子を作る道に走ってしまう。

 メスがこれに対抗する手段は、ただ一つ。交尾を拒否することだ。
 より正確には、出産後も子育てに協力してくれる誠実なオス以外との交尾を拒否するということだ。
 誠実なオスを識別するための有効な方法は、なかなか交尾に応じないことである。交尾に至るまでに長い交際期間を要求するのである。メスが最終的に応じるまで交尾を我慢できないようなオスは、誠実な夫になる見込みがない。
 こうすることによってきまぐれな求愛者を除外し、誠実さと忍耐を示すことのできたオスとだけ交尾をするのである。

 また、求愛の儀式に際して、メスはしばしばオスに対してかなりの量の婚前投資を要求する。 オスが巣を作ってくれるまでメスが交尾を拒むこともあるし、オスがメスにたっぷり食物を与えねばメスが交尾に応じないこともある。
 こうした婚前投資を受けることは当然メスにとって利益になるし、家庭第一のオスを選ぶための戦術とも言える。メスは、交尾に応じる前にオスが子どもに対して多量の投資をするように仕向け、そのため交尾後のオスはもはや妻子を棄てても何の利益も得られないようにしてしまうのである。かなりの量の婚前投資をしたオスはこう考えるのだ。「この子に死なれたら、あれだけの婚前投資が無駄になってしまう」と。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 以上のような事は、一般的な動物に関して述べられたものだが、驚くほど人間にもよく当てはまる。
 セックスの結果子どもが生まれた場合、その子を産み育てる上で苦労するのは男よりも女のほうである。男は自分で出産をしなくてすむし、授乳もしない。
 したがって、男が妻子を棄てて別の女に走る場合と、女が夫と子どもを棄てて別の男に走る場合とを考えてみると、女の損失のほうがはるかに大きい。

 そこで女は、誠実でない男とのセックスを拒否する。
 出会ったばかりの男とセックスをすることはせず、十分な長さの交際期間を経て、ようやく男とセックスをするのである。
 また、セックスをする前に、女は男に対して投資を要求する。家であったり、金銭であったり、車であったり。もちろん女が男に投資をする場合もあるが、男が女に投資することのほうが圧倒的に多い。
 その結果、男は「せっかくこの女に投資をしたのだから」と浮気をせずに、同じ女のもとにとどまるのである(もちろん例外はたくさんあるが)。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 いかがでしょうか。このように、普段よく目にする男女の行動も、遺伝子的見地から説明がつくのです。
 もちろん人間には理性があるから、遺伝子だけではなく、いろんな要因で行動が決定されるわけですが。

 こんな話がたくさん。『利己的な遺伝子』、おもしろい本ですよ。
 税込み2,940円と少々高いですが、買って損はないと思いますよ。本棚に飾っておいたら賢そうに見えるしね。
 また機会があれば、別のエピソードも紹介します。
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by uso8000000 | 2006-09-15 14:54 | その他

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