大人は楽しい

M−1グランプリ 2009

 しりこだまさんの金魚の話で思い出したんだけど。

 大学の物理のゼミで、ある日教授が「来週は液体窒素を持ってくるのでそれで遊んでみましょう」と言った(なんてこと言いだすんだ)。
 そしたら錆びたクサリみたいな顔をした男が「金魚を冷凍させるって実験やりましょうよ」と言い出した。

 たしかその何週か前に教授が
「動物は外気温が下がると凍死しますが、これは半端な温度で細胞が壊されるからです。一気に絶対零度の近くまで温度を下げれば細胞は壊れないので死にません。人間ぐらい大きな動物だと難しいですが、金魚ぐらいなら一気に凍らせて後で一気に解凍すればまた動き出します」という話をしたのだ。

 その話は僕も「じゃあその技術が進めば人間も冷凍冬眠できるじゃん」と思ったのでよく覚えていたけど、実際に目の前で実験をしたいとは思わなかった。

 でもクサリ顔の男は翌週のゼミの前に大学の近くのペットショップに行って、金魚を一匹買ってきた。
 僕は「おいおいやめろよ……」と思っていたし、隣の席の社長令嬢のおかっぱの女の子は世界史の教科書のポル・ポトのくだりを読んだときのような顔をしていたんだけど、クサリ男はかまわず金魚を液体窒素の中に投入した。


 【わかったこと】

 液体窒素の中に投入すれば一気に-273℃近くまで冷やすことはできるけど、-273℃から一気に常温に戻すことは不可能。





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 まずは本戦と関係のない話。


・今田耕司が「なんで前説がくまだまさしなんでしょねえ……」と笑いをとっていたけど、『何も考えずに笑える』&『本戦出場者とネタがかぶる心配がない』という点で、前説としては最高の人選だと思う。


・東国原知事が前半ダメダメすぎて、中盤からぜんぜん話をふられなくなった。
 で、思い出した。
 今でこそ知事をやってしょっちゅうテレビに出ているから忘れていたけど、『そのまんま東』って大した芸人じゃなかった。
 島田紳介や松本人志や上沼恵美子みたいに芸人として一時代を築いて今でも現役でバリバリやっている人たちと並んで、かわいそうなぐらいに芸人としての格の違いがはっきり出てしまった。
 東国原知事がナイツに向かって「よくネタをきちんと覚えていて噛まずにしゃべれるな」と言って、今田耕司に「それはここにいる全員ができることです!」とつっこまれていたけど、そのあたりまえのことができない人の集まりがたけし軍団だった。そういう意味で、あのコメントは決して的外れではなかった。
 今回、M−1に出ていちばん損をしたのはハリセンボンでもNON STYLEでもなく、東国原英夫だったと思う。


・今田耕司が「毎年違和感なく客席にピエール瀧さんがいる」と言っていたけど、違和感ありすぎだろw
 あんなでかい人がいたら。
 ピエール瀧がNON STYLEとかのネタを見て笑っている姿は、何度見ても違和感たっぷり。
 俺の好きな電気グルーヴはそんなんじゃなかった!!


・敗者復活戦のネタと、敗者復活戦会場との中継。
 NON STYLEが出てきたときだけ明らかに黄色い歓声が上がっていた。
 固定ファン来てんじゃねえよばーか。
 敗者復活戦を勝ち上がったのはそいつらだけのおかげとは思わないけどさ。


・ネタ以外で笑ったところ

 キングコング梶原「ウ〜……イェ〜イ!!」
(その後に本人が出てきてツッコミを入れなかったからただパクっただけじゃないか)

 パンクブーブーのエントリーナンバーが4610(しろうと)

 松本&紳介が「笑い飯にはもうネタがない」と言った後の今田耕司「何言うとんねんあの二人は!」

 今田「原田さんも無念ですね、来年忘れ物取りに来るでしょうね」

 パンクブーブーをにらみつける笑い飯・西田

 今田「いかがでしたか?」
 西田「だいぶ気にしたんで、ええぐあいにおさまってます」 
 今田「誰がチンポジのこと聞いてんねん!」
  この流れ
  本ネタより笑ったかもしれない



 いよいよ個々のネタの感想

1.ナイツ (自己紹介)
 うまいしおもしろいんだけど、よどみなさすぎて笑うひまがない。笑ってたら次のネタを聞きのがすから笑えない。
 ただしこれを半分のスピードでやったら、平凡な漫才になってやっぱり笑えない。
 去年のネタから不条理を捨て、ダジャレとベタに徹した。このスタイルに将来はあるのだろうか。
 でも観客を待たない漫才なので、1番出番の不利益をあまり被らなかった。
○良かったところ:オチがきれい
×悪かったところ:「ご本人登場」はネット大喜利の世界ではベタ中のベタ


2.南海キャンディーズ (ストーカー)
 今年の南海キャンディーズはすごい、って聞いてたんで期待してたんだけど……。
 え? どこが? 数年前と変わってないじゃん。ネタも数年前のだし。数年前からインパクトがなくなっただけじゃないか。
 ツッコミのフレーズで笑いをさらいにいくにしては、ボケが重たすぎる。おかずがカレーならご飯は白飯、ご飯を酢飯にするなら乗せるのはあっさり生魚。カレーに酢飯は合わない。
 ナイツとは逆で隙間だらけの漫才だから、うまくいけば爆笑が続くけど、失敗すれば静寂が漂って悲惨なことになる。今回は後者だったね。
○良かったところ:ネタ後のトークでがんばっていた
×悪かったところ:ネタ後のトークも若干から回り


3.東京ダイナマイト (総合格闘技の勝利者インタビュー)
 ネタはたいしたことないんだけど、なんだかおもしろい。Mー1の緊張感を吹き飛ばして、一瞬にして深夜番組の空気感にしてくれる。
 ただ立っているだけでなんだかおもしろいというのは持って生まれた華だと思う。たとえばナイツ、パンクブーブー、NON STYLEなんかにはこの華やかさはまったくない。
「ハマさんとこの見習いの……」がなぜだかツボにはまった。ネタでいちばん笑ったのはこの箇所だった。たいしてひねったボケじゃないんだけどな。なんでだろ。
○良かったところ:立ち居振る舞い
×悪かったところ:とても勝負ネタとは思えない


4.ハリセンボン (煮物をお隣さんにおすそわけ)
 このコンビが勝負する土俵は漫才じゃないと思う。もっともっとバラエティに出なさい。
 期待していなかったので失望もせず。
 去年のザ・パンチみたいにいじられず司会者も審査員も気をつかっていたのが余計にかわいそう。誰か「まったくウケてなかったね〜」って言ってやればよかったのに。
○良かったところ:女芸人ならではのネタじゃなかったところ
×悪かったところ:何から何まで


5.笑い飯 (鳥人)
ん〜。なんだかやたら評判いいんだけど、僕はあんまり笑えなかったなあ。
笑い飯は大好きなんだけど、必死すぎた。かえって観ていて冷めてしまった。
でもむちゃくちゃな設定にいきなり飛び込んでいくのはすごいと思う。漫才にしてもコントにしても芝居にしても大事なのはどうやって客をだますかなんだけど、他のコンビが精巧な偽札を作ったり紙幣をカラーコピーしたりしている中、笑い飯だけは紙切れに手書きで「100万円」って書いて渡したらそれが意外と通用しちゃった、みたいな。
その乱暴なまでの説得力は、普段の生き方からにじみ出てくるものだと思う。NON STYLEがいきなり「頭が鳥で下が人間でタキシードを着た鳥人ってのが現れて……」って話しだしても、誰もついてこないもんなあ。
こういうセンスは笑い飯と千鳥がずば抜けている。
設定が奇抜すぎるから、鳥進一、手羽真一、というくだらないボケが活きる。
○良かったところ:ネタのフレーム
×悪かったところ:はじめから飛ばし過ぎ


6.ハライチ (ペットを飼いたい)
ツカミ失敗しすぎw 子犬が死ぬ話から入っちゃだめだろw
金魚を殺す話から入った僕が書くのもどうかと思うけど。
僕は笑わなかったけど、悪くないと思う。
こういう実験的なネタをするコンビを1組は入れるのがM−1のいいところだと思う(当然批判されるけど)。
まだまだ改良できるネタの形だと思う。
○良かったところ:ツッコミの人の頭の形がきれい
×悪かったところ:オチが冗長


7.モンスターエンジン (夫婦の寝室での会話)
粗すぎるw
15分で作ったようなネタだな。準決勝もこのネタだったとしたら、よくこれで決勝いけたもんだ。
でもモンスターエンジンも東京ダイナマイトと一緒で、観ている人に何かを期待させる雰囲気は持っている。なんだかわからないけど、おもしろそうな感じはする。
西森のしゃべりについては、僕は大阪の言葉を聞き慣れているので気にならなかったけど、そうじゃない人にとってはあれは聞き苦しいかもしれない。中田カウスの「ガラが悪かった。女っぽさを出した方がよかった」というコメントは的外れもいいところだけど。
○良かったところ:しゃべりはうまい
×悪かったところ:ボケが想像の枠内


8.パンクブーブー (隣人にうるさいと注意)
これまでに2、3回このコンビのネタを観たことがあるが、そのどれもおもしろくなかったからぜんぜん期待していなかった。だけど、思っていたよりずっとおもしろかった。
実際笑ったし、無駄な手もほとんどなかった。有効打を積み重ねて、判定で勝利という感じ。インパクトのあるボケで一発KO!なんてのははじめから狙っていないかのよう。
悪いところが見つからないから高い点をつけざるを得ない。僕が審査員でも、2番目ぐらいに高い点をつけたと思う。
○良かったところ:地団駄を踏んでつっこむ、ってのはこれまでありそうでなかったんじゃないかな。あったらごめん。
×悪かったところ:思いつかない。印象に残っていないということでもある。


9.NON STYLE (「俺に勝とうなんて百年早い」と言いたい)
うまいしおもしろくないわけじゃないけど、笑えない。いつものNON STYLE。
一生懸命やっているのが伝わってきちゃうのよね。だって一生懸命がんばってる人を笑っちゃ失礼でしょ。東京ダイナマイトとかモンスターエンジンみたいな余裕を見せている人の漫才は笑えるけど。
中盤の「このネタ飽きた。やめよう」はボケが絶対言っちゃいけないことだよね。せっかく客をノせたのに、自らはしごをおろしちゃった。見ていて思わず「え!? なんで!?」と言っちゃった。
○良かったところ:ちゃんと台詞を覚えてネタを噛まずに言えたところ
×悪かったところ:ボケが設定放棄という最悪の展開


1位・笑い飯。2位・パンクブーブー。3位・NON STYLE。
まあまあ納得の順位です。
個人的には笑い飯とパンクブーブーと東京ダイナマイトかな。
でもNON STYLEのほうが無難。グランプリの名を汚さぬためには前回優勝者はそこそこの順位をとってもらわないとね。
だけどトップ出番のナイツと、最後の登場で前回優勝のNON STYLEが7点差で、どっちが最終決戦に進んだほうがいいかっていったらそりゃあナイツでしょ。


最終決戦。

1.NON STYLE (「安心せい、峰打ちじゃ」って言いたい)
ネタの入口を見た時点でもうげんなりした。
あまりにもよく似た設定のネタを2本作ってくるところに、芸人としての底の浅さが見えちゃったよね。
楽しませるための漫才じゃなくて、勝つための漫才。
でも1本目のネタよりは良かった。


2.パンクブーブー(陶芸家に弟子入り)
これも1本目より良かった。
先の読めるボケが多かったけど、「俺は誰の指図も受けない!」「じゃあ弟子には向いてない」というやりとりはおもしろかったな。
相変わらず失点の少ない漫才。笑った。


3.笑い飯 (野球の審判→ラグビーのキック)
僕はこのネタは評価しない。
下ネタがあったからとかじゃなくて、おもしろくなかったから。
80点のネタをやれば優勝できる場面であえてバカすぎるネタをやった、という姿勢は評価するけど。でも半分は逃げの姿勢だと思う。
7年ぐらい前のバカネタを引っぱりだしてきて「俺たちはこの大舞台でこんなバカをやるんですよ」って言われても、負けたときの言い訳にしか聞こえない。
かといってNON STYLEみたいに1本目と同じような設定のネタを作って勝ちにいくことは誰も笑い飯に期待していない。
だから、ほんとにおもろいことをやってやろうと思ったんなら、バカな新ネタを作るべきだった。
チンポジに匹敵するぐらいバカな新ネタを作って勝負していたら、勝っても負けても大拍手を送ってたけどなあ。



 笑い飯が敵前逃亡、NON STYLEが進歩のない姿を見せて、優勝はパンクブーブー。
 妥当な結果だね。


 パンクブーブーのネタはあんまり見たことがないので推測だけど、いろんなネタのいい部分を詰め込んだんだろうなあという印象。
 9年間決勝に出られなかった間のネタのいいとこどり。
 一方の8年連続出場していた笑い飯は、最後にネタ切れ。
 そこの差が明暗を分けたんじゃないかな。
 

 パンクブーブーが演じた2本のネタはおもしろかった。
 しかしパンクブーブーの道の先にはアンタッチャブルという巨星がいる。
 ネタの作りかたはアンタッチャブルとよく似ていて、しかもボケもツッコミもアンタッチャブルのほうがはるかに上。もし2004年のアンタッチャブルと2009年のパンクブーブーが同じ舞台でネタをやったら、100人中90人以上はアンタッチャブルに票を入れるんじゃなかろうか。これは好みの差じゃなくて、力の差。
 そういうことを考えると、M―1グランプリという大会は、弾切れになってきているんじゃないのかなあ。だからってもうやめたほうがいいだなんて少しも思わないけど。
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by uso8000000 | 2009-12-22 22:32 |

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