大人は楽しい

共産党の歴史について考えるための2作品

 最近見た、共産党にまつわる2作。
 べつに共産党のことを調べたかったわけじゃなくて、たまたま。


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         「実録・連合赤軍 あさま山荘への道程」(DVD)


 以前からあさま山荘へ至るまでの連合赤軍の行動には興味を持っていたので関連する本を探したのだが、まともな本のほとんどは警察側から見た本(佐々淳行『連合赤軍「あさま山荘」事件』)あるいは元連合赤軍メンバーの書いた本(坂口弘『あさま山荘1972(上・下)』)であり、連合赤軍内部のことを客観的視点から書いた書籍はきわめて少ない。しかもほとんどがあさま山荘突入を話の中心に据えている。それ以前のことを知りたいのに。
 で、ちょうど目に留まったこのDVDを購入。
 190分の長時間映画なので少しずつ観ようと思っていたのだが、圧倒的迫力に気圧されて一気に観てしまった。事実ほど力のある作品はない。

 タイトルの通り、メインはあさま山荘立てこもり事件ではなく、そこにいたるまでの山岳ベース事件
 日本をより良くするための革命を起こすという使命を持っていた若者たちは、なぜ12人の仲間殺しという凄惨なリンチ事件に駆り立てられたのか。
 世界的に共産主義が力を失った現在、彼らの行為を愚かだと笑うのは簡単である。
 だが彼らは理念を持っていた。軍事訓練は革命達成のための手段であり、同志を殴ることもまた「革命的規律を守らない同志に自己批判を促す」ためであった。
 彼らが同志を殴るのは、思想の決定的な対立からではない。化粧が濃いとか、銃に小さな傷をつけたとか、そんな些細な理由によって同志を死に至らせるまで殴りつづけるのである。
 彼らは精神異常者ではないし、平均以上に優秀な頭脳の持ち主である。彼らの行動の根底にあるのは狂気でも悪意でもなく、全人類を思う気持ちである。それこそが彼らを暴力へと駆り立てるのである。

 こういった行動は歴史を顧みればいたるところに潜んでいるものだが、わずか三十数年前の日本で、ごくごく普通に育った若者たちがおこなったというところにこの事件の強い暗示性がある。
 たとえば今、環境破壊を憂う気持ちが山岳ベース事件へと向かうことが無いと誰が言えるのだろうか。いやべつに環境保護を否定するわけじゃないよ。

 山岳ベース事件の異常性(今の我々の感覚からすれば)に比べれば、その後に続くあさま山荘立てこもり事件そのものに特異性はない(はじめてテレビ中継されたとか周縁は珍しかったけど)。
 あさま山荘に立てこもった連合赤軍メンバーは警察に追いつめられただけであり、そこには格段の思想はなかった。ただ捕まりたくなかっただけ。

 ちなみにあさま山荘事件以後、連合赤軍は人民の支持を失い、新左翼運動は急速に勢いを失った。
 皮肉なことにも、共産社会への革命をめざした彼らこそが共産主義運動の力を失わしめたのである。




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         米原 万里『嘘つきアーニャの真っ赤な真実』


 9歳から14歳までをチェコのソビエト学校で過ごした著者が、数十年の時を経て、かつての同級生の少女たちを訪れる。

 性知識が豊富だったギリシャ人のリッツァは、ドイツで医者を開業していた。
 教師から「あなたは本当にピタゴラスと同じ民族なの?」と呆れられるほど数学が嫌いで、一度も訪れたことのない祖国ギリシャの空の青さを事あるごとに自慢していたリッツァがどうしてドイツで医者をやっているのか……。
(「リッツァの夢見た青空」)

 虚言癖があるけれどみんなから愛されていたアーニャ。
 誰よりもロシア語が達者で祖国ルーマニアを愛していたアーニャはイギリスに住み、ロシア語を忘れていた。少女時代に彼女がついた罪の無い嘘の理由とは……。
(「嘘つきアーニャの真っ赤な真実」)

 頭脳明晰で葛飾北斎が大好きなユーゴスラビア人の少女・ヤスミンカ。
 彼女の消息を調べていた著者は、ヤスミンカが空爆下のボスニア・ヘルツェゴビナに住んでいるという噂を聞く……。
(「白い都のヤスミンカ」)


 3人に共通しているのは、彼女らがみな社会の変遷にその人生を大きく揺さぶられたということ。
 プラハの春によりチェコはソビエト軍の侵攻に遭い、外国人だった彼女らはあちこちの国に散っていった。
 だが、ルーマニアではチャウシェスクが独裁政権を敷き、冷戦の終結によってソ連から独立した国々では民族紛争が絶えない。彼女たちは、幼い頃に思い描いていたものとはまったく異なる人生を歩むことを余儀なくされる。

 日本人が内部からソビエト連邦(およびソビエト共産主義)を描いた、史料としてもたいへん貴重な作品。今では失敗だったと切り捨てられる共産主義の功罪両方を、生活者の立場から語っている。
 なにより、物語としておもしろい。
 臨場性にとんだ学生時代のエピソードはユーモアに溢れていて笑いを誘うし、かつての同級生を探して東奔西走するくだりは良質なミステリーである。
 必ずしもハッピーエンドではないが、時代に翻弄されたかつての少女たちの人生は、しっかりと僕の胸に足跡を残した。
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by uso8000000 | 2009-04-13 20:15 | 紹介

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